4.気候と湿原の意外な関係
霧ヶ峰の各月の最高・最低気温および降水量は、次の表のとおりです。
夏季でも最高気温は20℃台前半程度、冬季の最低気温はマイナス10℃以下と冷涼寒冷です。また、雨や雪だけでなく、年間をとおして発生する霧からも水分の供給を受けます。
積雪の八島ヶ原湿原
気温
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
最高気温
(℃)
−2.6
−2.1
−2.2
欠
14.1
16.6
20.9
21.7
17.0
12.3
欠
1.2
最低気温
(℃)
−11.2
−12.4
-7.7
欠
5.1
9.5
13.8
14.4
10.4
4.4
欠
-7.4
※数値は長野県霧ヶ峰自然保護センターホームページ参照。
※平成6〜13年の8年間の平均値。
※12〜3月は長野県企業局霧ヶ峰有料道路管理事務所、5〜10月は長野県霧ヶ峰自然保護センターの観測値。
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
降水量
(mm)
欠
欠
欠
(3.0)
136.0
124.0
653.0
47.0
180.0
260.0
99.0
76.0
※数値は気象庁ホームページ気象観測(電子閲覧室)平成18年白樺湖アメダスを参照。
※( )は資料不足値
実は、このような気候と霧ヶ峰の湿原には意外な関係があるのです。
湿原には、大きく区分して、高層湿原、低層湿原、中間湿原の3つのタイプがあります。霧ヶ峰の湿原は、尾瀬ヶ原と共に日本を代表する高層湿原のひとつです。
高層湿原の特徴は、
・寒冷高湿地に発達する。
・水分は雨・霧・露などの雨水によって供給される。
そのために栄養塩類に乏しい。
・植物の茎葉の分解が極めて遅く、泥炭として蓄積する。
・水質・土壌は酸性に傾く。
・ミズゴケが生育する。
等が挙げられます。
高層湿原の発達の過程は、寒冷高湿地の窪地や凹地に雨・霧・露によって水がたまり、植物が生育することから始まります。最初の植物は一定期間で枯死して、次の新しい植物が生育し、大きな撹乱がない限り、枯死→生育→枯死→生育→が繰り返されていきます。
温暖な土地では、枯れた後の植物の茎葉は、微生物が無機物に分解するため、蓄積していくことはありませんが、高湿寒冷な土地では、微生物の活動が活発ではなく、分解が極めて遅くなります。そのため、分解されずに残った植物の茎葉は水の底に蓄積し泥炭となります。そうすると、水は酸性になり、ミズゴケなど酸性の水でも生育できる植物が優占します。さらに時間が進むと、次々に底に蓄積した茎葉がついに水面に達して凸地になり、今度は周囲の凹地に水がたまります。このような繰り返しにより発達したのが高層湿原なのです。
霧ヶ峰の“霧”と冷涼寒冷な気候は、湿原の発達になくてはならないものであったのです。
踊場湿原
参考文献 ※「生態の事典;沼田真編;東京堂出版;1993」
3.すべては霧に包まれる
5.御射山祭往時をしのぶ歌
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